PLAN OYAMAは、2023年5月に民間の策定協議会・検討委員会と小山市が連携して策定した、小山駅周辺の将来像を描いた長期ビジョンです。
2054年までに目指す姿を取りまとめたものであり、民間と行政が共通の方向性のもとでまちづくりに取り組むための指針となっています。
計画が策定された背景には、小山駅周辺における商業ビルの空洞化や都市のスポンジ化の進行があります。店舗が減少し、空き地や駐車場が増えることで、まちなかの賑わいが失われつつあることが課題となっていました。
こうした状況を踏まえ、まちなかの賑わいを維持・再生するために、小山駅周辺でさまざまな取り組みが進められています。
本記事では、小山市職員へのヒアリング内容をもとに、PLAN OYAMAの考え方や取り組みについて詳しく紹介します。

お話を聞いた方
- 氏名:田中雅人
- 所属:都市整備部 まちづくり推進課 まちなか再生推進係
- 役職:主査
小山駅周辺の官民連携、ウォーカブルなまちづくりの推進。計画策定から事業の企画立案、民間事業者および関係者との協議調整など幅広く携わる。現在は主に、PLAN OYAMA プラットフォームの事務局として運営事務全般を担当。
Contents
民間の団体と公共空間に人が訪れるきっかけをつくる
PLAN OYAMAが策定されたのは令和5年5月のことです。同年11月には、プランを推進する民間の団体「PLAN OYAMAプラットフォーム(通称P.O.P/ポップ)」が設立されました。
P.O.Pは地域を盛り上げたいと考えている、行政・企業・団体・個人など様々な人たちで構成され、小山駅周辺の公共空間を活用した様々な取り組みを行っています。

例えば、令和6年4月からは小山御殿広場(小山市役所隣)にて、キッチンカーによる販売会を社会実験として期間限定で実施しています。
ランチタイムに、お弁当やハンバーガー、珈琲やスコーンといった軽飲食が4店舗ほど出店し、近隣に住む人たちが訪れて広場で飲食を楽しんでいます。

そのほかにも、令和6年6月には一部再整備が完了した城山公園の開園式に合わせたオープニングイベントを、同年12月には小山駅東口にある白鷗大学で開催されたビジネスエキスポに合わせたミニマルシェを企画・運営しました。
こうした活動を通して、まちなかにどのような変化が生じているのでしょうか。小山市職員の方々に聞いてみました。

「PLAN OYAMAのプロジェクトが始まる前は、行政主導のイベントが中心だったかと思いますが、この2、3年で民間の人が企画するイベントが増えてきたと感じています。小山駅周辺が徐々に良い方向に変わってきている。そのような印象があります」
実際に、西口のメインストリートである祇園城通りの歩行者数は2022年以降、毎年増加(2022年から2024年で月平均歩行者数が約16%増加)しているといいます。
こうした数値の変化に加え、御殿広場でランチ販売会の準備をしていた際に、広場を訪れた子ども連れのお母さんから感謝の言葉をかけられたことが印象に残っていると話してくれました。
「『こういう企画をやってくれて本当に助かります。ありがとうございます』と言ってもらったことがありました。取り組みって、やっている側だけで満足して終わってしまうこともあるので、参加者の声を直接聞けたのは嬉しかったですね」
少し照れくさそうに「小さいことかもしれませんが」と付け加えながら、今後も御殿広場を活用しつつ、城山公園などほかの公共空間へと民間による公共空間の活用の場を広げていきたいと意気込みを語ってくれました。

PLAN OYAMAの土台となる#テラスオヤマの始まり
PLAN OYAMAでは公共空間を活用した多様な取り組みが行われていますが、その土台となった活動は、2019年に実施された社会実験「#テラスオヤマ」までさかのぼります。
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#テラスオヤマは、小山駅西口周辺エリアにて、歩道や店舗の余白スペースをオープンテラスとして活用した取り組みです。
当時、「まちなか元気会議」のリノベーションまちづくりプロジェクトに参加した小山市職員のチームが企画しました。
小山駅西口エリアが、ただ通り過ぎるだけの場所になっていないかと疑問を抱き、何か目的地となる場所にできないかと考え始めたのがきっかけでした。
歩道にテラス席を置くことで、歩道に滞在し、時間を過ごすという新たな価値が生まれます。目的地となる場所を増やし、人が訪れ、賑わいを生み出すという考え方は、PLAN OYAMAの基本的な考え方にもつながっています。
こうした取り組みを行うためには、民間の方々の存在が欠かせません。#テラスオヤマを始める際には、地域に根差して長くイベントなどに携わってきた人の存在が大きかったといいます。

「地域の人たちの理解なしに新たな取り組みを始めるのは難しいので、地域の兄貴分のような存在の方に相談しながら進めました。小山駅西口周辺でお店を営む方々につなげていただいたので、その人たちの意見を聞きながら#テラスオヤマをスタートしました」
何かと相談できる地域の兄貴分の方がハブのような役割を果たしたことで、取り組みは進めやすくなったそうです。
「それまで小山市では、このような公共空間を民間と連携して活用するような取り組みは主流ではありませんでしたが、当時の上司が国土交通省から出向されていた方で、新たな視点で積極的に推進していただいたこともあり、#テラスオヤマ以降も、思川でのリバーサイドマルシェやSUPなどの社会実験、公園活用事業提案の募集などの試みが広がっていきました。」
こうした取り組みを通じて、その後のPLAN OYAMAの検討やP.O.Pの活動に携わるようになったメンバーとの繋がりが生まれました。
公共空間の活用という発想と、活用を担う民間の人々とのつながりの両面において、#テラスオヤマはPLAN OYAMAの土台となる取り組みだったようです。
スモールスタートで徐々に大きく、想いを持ってプラン実現を目指す
新たな取り組みを始めるには、多くの壁を乗り越える必要があります。
これまで紹介してきた活動も例外ではありません。場所ごとの関連法令の理解や公の場として配慮した企画とするなど、公共空間の活用を行ううえでの苦労もあったそうですが、なかでも最も大変だったのは管理者側との調整だったといいます。
「何か新しいことを始めると様々な影響があります。御殿広場のキッチンカーを例にすると、利用者にとっては昼食の選択肢が増えて嬉しい反面、周辺店舗からするとお客さんが取られてしまう面もあります。また、庁舎内にある店舗のゴミ箱に、キッチンカーで購入した商品のゴミが捨てられてしまうと、管理する部署としては困ってしまいます。そうした問題が起きないようにし配慮し、管理者側の理解を得たりするための調整が大切ですね」

キッチンカーの出店日数を限定し、ゴミ捨てに関する注意喚起をする工夫を重ね、公共空間の管理者から一定の理解が得られているそうです。
こうした問題はやってみないと分からないことも多いことから、はじめて取り組む際は細かく詰め過ぎずにスモールスタートで進めるようにしているといいます。
「管理者側との調整や手続きはしますが、企画内容や運営についてはほぼ民間の方にお任せしています。民間のほうが賑わいづくりの視点に長けているので、なるべく行政の色が企画に出ないように心がけています。」
行政と民間が一定の信頼関係のもとで、それぞれの強みを活かしてお互いに委ねることが官民連携で取り組むときのポイントになっているそうです。
こうした新たな取り組みを形にするには、時間と熱意の両方が必要になります。ここまで一生懸命に取り組み続けている理由について、改めて話を聞いてみました。
「やっぱり、このまちを良くしたい思いが根幹にあります。小山駅周辺は、映画を見たり、ゲームセンターに行ったり、幼少期から馴染みのある場所でした。子どもの頃の私にとっては、お店もたくさんあって、けっこう都会な印象だったんです。けれど今は、シャッターが閉まったお店も多く、どこか寂しさを感じてしまいます。このエリアが『目的地』となる場所になるよう、公共空間を価値ある場所にしていくことが必要だと感じています。そのために労力をかけることは、全然苦ではないです」

PLAN OYAMAで描かれた未来には、民間だけでなく、行政の立場で関わる人たちの「まちへの想い」もしっかりと込められていることが伝わってきます。
P.O.Pに参画する人が増えて小山駅周辺が賑わう未来を共につくる
PLAN OYAMAの実現には、長期に渡り、ビジョンの実現を推進するP.O.Pだけでなく、多くの地域のプレイヤーが同じ方向性のもとで取り組むことが必要になります。
そのためには、P.O.Pの組織体制強化が課題であると話してくれました。
「将来的にはP.O.Pに多様な民間の方々が参加できるようにしたいです。P.O.Pの活動を見て、『自分もやってみたい』と感じてくれる人が集まり、お手伝いや協力を通してノウハウを得て、その人たちが次の担い手になっていく。P.O.Pが小山駅周辺のまちづくりの議論をしたり、つながりを生むテーブルのような場になるのが理想だと思っています」

P.O.Pを通して様々な取組みが生まれ、小山駅周辺を目的地として訪れる人が増えるよう、体制を整えていきたいといいます。
続けて、小山駅周辺を訪れる人が増えた後の展開についても話してくれました。
「今やっているような取り組みが、特別なものではなく、当たり前の風景になることが望ましいと思っています。週末だけでなく、平日もふらっと行けば何かしらのイベントが開かれている。そんな日常になるといいですね」
今後もPLAN OYAMAの実現に向けて歩みを進めていきたいと話してくれました。


